「一般社団法人がん医療創生機構」設立にあたって
近年の世界的ながん研究の進歩により、がん医療は大きく変貌しつつあります。特に分子生物学研究やAIの導入などによるがん医薬品や個別化治療開発などの進歩は目覚ましいものがあります。一方でわが国からグローバルに通用する医薬品開発やエビデンス創出は限られており、トップレベルの研究力の長期低落傾向やドラッグラグ・ロスも指摘されています。
このような状況の改善を図るため、この度「一般社団法人がん医療創生機構」を設立いたしました。われわれは、すでに2015年から全国のアカデミア研究施設と製薬企業との共同研究による産学連携全国がんゲノムスクリーニング事業(SCRUM-Japan)の各個別研究で得られた約2万5千例の最新のゲノム・マルチオミックス解析データと国際標準規格で統合した質の高い臨床情報に基づいたデータベース(VAPOR CONE)を構築しております。本機構はアカデミアの基礎・臨床研究者の先生方にVAPOR CONEのデータを共有するとともに、厳正な審査を行った上で研究助成を行ってまいります。さらに、今後の新しい創薬標的探索や創薬技術開発に必要となる空間的トランスクリプトーム解析、先端的AI、量子コンピューター技術などを世界的視野で積極的に導入し、わが国からの医薬品・個別化治療開発やグローバルエビデンス創出などを促進し、同時にドラッグロスの原因となっている海外新興バイオ医薬品企業(EBP)の呼び込みや国内EBPの育成なども推進して行く所存です。
わが国から世界に通用する新しい創薬・臨床開発に資するアカデミア研究の促進のため、関係する各方面の皆様に本機構に対するご理解とご支援を賜れば幸甚です。
一般社団法人 がん医療創生機構 理事長